器用貧乏
なんでも卒なくこなす
それをかっこいいと思い始めたのはいつ頃だっただろうか。
特に理想像を見つけたわけでもなく。強いて言えば家の修理やものづくり、キャッチボールをしてくれた父親だろうか。
今の自分は自他が認める器用貧乏だ。
勉強でもスポーツでも、すぐにコツを掴めてしまうことがよくあった。それで注目を浴びることも珍しくなく、またそんな注目を浴びるのが嫌いではなかった。
だが、それによってついた金箔より薄く脆い自信が今の自分を苦しめる原因となっていることは言うまでもない。
武器がない。
自分にはこれがあるぞ、という。
あいつといえばこれだよな、という。
武器が無いと不安になる。
就活で何を売ればいい?何を評価してもらえばいい?
なんでも卒なくこなすのは、不器用な人が見れば羨ましいと感じるだろう。しかし、不器用な人は鋭い矛を持っていると思う。
バイトの店長の言葉を借りる
不器用な人はそれしか出来ないから、それだけをやるんだわ。俺らみたいな器用貧乏はさ、なんでも出来ちゃうじゃん。だからあれもこれもって手出してもそれとなく出来ちゃうんだよね。で、もう殆どマスターしましたみたいな顔でいるんだけど、
不器用な人は自分の領域の外に手出しできないし、出しても出来ないってわかってるから手を出さんのよ。だから自分が磨いた武器で食べて行けちゃう位になるんだよね。俺昔剣道やっててさ、歴浅いのに高校の時インターハイも出れたやんね。そん時はまだ2年で3年も引退してなかったんだけど、俺より弱かった先輩とかも沢山いて。でも俺はもうめんどくさくなって高校で剣道辞めたんだけど、その弱かった先輩は大学行ってもずっと続けてて。それで今段も上がって自分で道場開いちゃってさ、それで食っていけてんのよ。
自分は中高バスケ部だったが、同じバスケ部でもスポーツ色々できるやつと、バスケしか出来なくて体育で運動音痴になるやつがいることを思い出した。
でもそういうやつに限ってバスケめちゃくちゃ上手い。それはもう身体がバスケに適したものになってしまっているからだと思う。
結局長い目で幸せになるのは不器用な人なのかもしれない。