風刺
荒野。
荒んだ地。
ただ虚ろに揺らめく影。
覇気もなく、生気すら感じない。
項垂れ佇む姿を目撃されることも無く、ただ存在する人影は、世に流離うことも知らず、まるで当たり前のように与えられていた何かを奪われたかのような寂寥感が漂う。
ただ、その人影が見る景色はあたかも見るもの全てが彩色に映り、その中心に自分が自他ともに認める存在としてそこにいるものだと思っている。
そう、信じている。
そう、信じていたかった。
寧ろ六合はその人影の存在すらも許すことなく、早く海に沈めと消えかかる足に促す。
唯一の固有名詞であり最後の砦であった実体からも見放された影は存在する価値、意義、責務すらも無くなり、奈落へと破線を綴る。
また、その実体も存在する実体では無くなり、すぐに二重破線を紡ぐこととなる。
これは不可避だ。逃げられない。
逃げても最後に待つのは死。
罪は何処へ行くのか。
終着駅のない罪の満員電車が世界を彩る。